コラム)カウリの森林 ワイポウア・フォレストについて
ニュージーランド(NZ)の大都市オークランドから北西へ約200キロいったところにホキアンガという海辺があります。ここは先住民マオリが初めてこの地に到着した場所として知られている地です。

マオリは文字を持たなかったから正確な記録はありませんが、彼らがNZに移り住んだのは今から約千年前と言われています。彼らはこの地を「アオテアロア」ー(長く白い雲のたなびく地という意味)と呼びました。なるほど、NZの雲は時々、手が届きそうなくらい低くたなびくときがあります。

そこから南へ約70KM進んだところに「ワイポウア」という森があり、ここは、シダやコケ類といった亜熱帯と針葉樹類が密生していて、世界でも有数且つユニークな太古の森と言われています。NZはかつてゴンドワナ大陸の一部でした、その時もきっとこんな雰囲気だったのでしょう。

19世紀に入り、英国人がこの地に移り住むようになると、原生林の伐採が本格的に始まりました。彼らは伐採後、火をつけてはげ山にし、英国から持ってきた芝生の苗を植えて、ウシやヒツジを飼育する牧場を作ったり、町へと姿を変えたりしていきました。その結果、今では国土の15パーセントほどしか原生林は残っておりません。1960年代に入り、NZの林業はそれまでの「原生林の伐採」から「ラジアタパイン(赤松)の植林」へと移行し、ました。それで、伐採は中止されワイポウアの森は奇跡的に残りました。

この森の中には、「カウリ」と呼ばれる巨木があります。一番大きいのは、高さ50メートル、幹回りが約14メートルです。間近で見ると、まるで高層ビルの真横にいるかのように感じます。マオリたちはその木を「森の神」(タネ・マフタ)と呼びました。


マオリ民族の間では、こんな言い伝えがあります。

「昔、空の神と大地の神が、しっかり抱き合っていたため辺りは真っ暗だった。暗さにすっかり嫌気がさした八百万の神々が明るくする方法を相談した。風の神が風を、海の神が波をそれぞれ起こして空と大地の神を離そうとしたが失敗した。
そこに現れたのが、森の神。空の神を自らの足の裏に載せ、天高く押し上げた。結果、空と大地の神を離すことに見事に成功。明かりが大地に差し込み、命が育まれた。」

他にも、こんな言い伝えもあります。
「ヘカカノウハウ(マオリ族の諺、意味は)、私は種だ。小さいがとても価値があるのだ。数千年の後巨木になる可能性が私にはある。このタネ・マフタのように、小さいものがあって大きいものがあるのだ、ヘカカノウハウ、私は種だ。それに誇りを持っている。」

このツアーは、まず「カウリウォーク」と呼ばれるトレッキングコースを歩くところから始まります。片道20分ほどの平坦な歩道なのですが、途中動植物やマオリの事などを話しながら進むので1時間半ほどかかります。

やがて「テ・マツアナヘレ」(森の父)が皆さんを出迎えてくれます。高さ約36メートル、幹回りが17メートルで樹齢3500年の巨木です。この木と心で対話をするようしばらくじっとしていると、木の葉が風にゆれ、鳥がさえずり、遠くで海の波打つ音が聴こえてきます。
その後はいよいよ、「タネ・マフタ」(森の神)に会いにいきます。メイン道路から5分程にあるこの巨木は、高さ55メートルとまるで高層ビルが真横にあるようでいて、けれどもその表情は実に穏やかで神々しく、中には思わず涙する人も少なくありません。


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